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いちご農園|アザミウマ防除状況・原因分析・改善提案

オアシスファーム町田 / 対象期間:1月〜3月 / 作成:鈴木
本資料は動力噴霧器による全体散布の記録をベースに作成。ピタイチ・ファインセーブは別途スポット散布あり(記録外)。

① 前提条件
記録対象:動力噴霧器による全体散布
ピタイチ・ファインセーブ:別途スポット散布あり(本記録に含まれない場合あり)

② 全体散布履歴(確定版)
日付 農薬名 散布量 使用量 倍率 備考
1/9 シグナム 200L 100g 2000倍 初期
1/29 スターマイト/ロブラール/スカッシュ 2000倍
2/6 サフオイル/スカッシュ 300L 1000mL/150mL 300/2000
2/16 サフオイル/ファインセーブ/スカッシュ 240L 800/240/120mL 300/1000/2000
2/20 ベネビアOD/スカッシュ 240L 120/120mL 2000倍
2/26 ピタイチ 130L 260mL 500倍
2/27 ピタイチ 130L 260mL 500倍
3/5 サフオイル(ハウス①)/スカッシュ 130L 433/65mL 300/2000
3/6 サフオイル(ハウス②)/スカッシュ 130L 433/65mL 300/2000
3/16 プレスト 260L 260mL 1000倍
3/20 ベネビアOD 2000倍 記録途中の可能性あり

③ 使用薬剤の構成
主力(アザミウマに強い)

ベネビア
スピノエース(未使用)
ディアナ(未使用)

実際に多く使われている

サフオイル
スカッシュ

補助・局所

ピタイチ
ファインセーブ

その他(病気・ダニ)

シグナム
スターマイト
カネマイト

追加候補薬剤(ローテーション強化用)
グレーシア乳剤
イソオキサゾリン系(新規)。速攻性あり。既存薬と系統がかぶらず耐性リスク低。
ファインセーブ(全体散布)
現在はスポット使用のみ。抵抗性アザミウマにも特効的。果実への薬害が少ない。マルハナバチへの影響も小さい。
モスピラン
ネオニコチノイド系。速効性が高いが耐性が出やすい系統。すでに抵抗性が発達している場合は効果が落ちる可能性あり。

④ 現状の構造
散布間隔:最大20日空き(1/9→1/29)。基本もバラつきあり(4〜10日以上)。
アザミウマの1世代完了は25℃で約10日・20℃で約20日(ヒラズハナアザミウマ)のため、10日間隔の散布でも1世代がギリギリ完了するタイミングに当たる。散布が遅れると即座に次世代に追い越される。

侵入〜現在の構造(推定)
STEP 1
外部侵入(初期)
STEP 2
初動で取り切れず
STEP 3
内部で繁殖
現在
内部増殖が主因

⑤ 現状の評価
⚠️ 総合:抑制はしているが、密度低下には至っていない
課題①
主力薬の効力が弱い
サフオイル中心の運用が続いている。

→ 減らす力が弱い
課題②
強い薬を使っていない
ディアナが未使用のまま。初動で強打できていない。

→ 密度を一度叩けていない
課題③
散布間隔が長すぎる
1世代完了は25℃で約10日・20℃で約20日。10日間隔でもギリギリで、それ以上空くと次世代に追い越される。

→ 叩いても次世代が育つ
課題④
スポット対応に依存
局所散布は部分的に効くが、全体の密度は下がらない。

→ 根本解決にならない

⑥ 原因分析:外部侵入 vs 内部増殖
現在「なぜ減らないのか」について、外部からの侵入が主因という見方と内部での増殖が主因という見方がある。どちらの可能性があるかを整理する。

仮説A:外部からの侵入が主因
根拠として考えられること
・ハウスの向きによってアザミウマの飛来量に差が出る可能性がある
・側窓・天窓の開閉タイミングで外から継続的に入り続けている可能性
・赤色LEDがない or 効果が弱い開口部から侵入が続いている可能性

この仮説が正しい場合に起きること
侵入を塞げば密度が下がる。天窓・側窓への防虫ネット強化が効果的な対策になる。

この仮説への疑問点
仮に天窓を完全に塞いだとして、すでにハウス内にいる個体はどうなるか。侵入をゼロにしても、内部に残っている個体が増殖を続ける限り密度は下がらない。

仮説B:内部での増殖が主因
根拠として考えられること
・アザミウマの1世代完了は25℃で約10日・20℃で約20日(ヒラズハナアザミウマ)
・1月9日→1月29日の20日空きで、20℃環境なら約1世代・25℃なら約2世代が内部で回った計算になる
・主力がサフオイル(気門封鎖剤)で、密度を積極的に下げる力が弱かった
・「じわ増え」と「散布後に一時減るが戻る」は内部で産卵サイクルが回り続けているときの典型的なパターン

この仮説が正しい場合に起きること
外からの対策をいくら強化しても密度は下がらない。まず内部の密度を一度リセットすることが効果的な対策になる。

この仮説への疑問点
現時点では粘着トラップによる分布データがないため、どこで増えているかを数字で確認できていない。

虫ブロッカー赤(660nm)について ― 効果の正しい理解

虫ブロッカー赤の設置方法と照射の仕組み(町田で使用中)
縦向きに吊り下げ、横方向360°に照射する外部侵入抑制タイプ。

ハウスの縁に沿って10m間隔で設置し、縦向きに吊り下げることで横方向360°に赤色光を照射する。外から侵入しようとするアザミウマに赤色光を当てて「植物がない」と認識させ、ハウスへの飛び込みを抑制する。設置高さの目安はベッドから1〜1.5m程度。

※ 縦向きにすると真下・真上への照射はできないが、アザミウマは1m程度しか飛ばないため真上への照射は不要。横360°照射が最も効率的。

主な目的:外部からの侵入抑制 + ハウス内での活動・拡散の抑制

⚠ 波長は非常に重要:630nm と 660nm では効果がまったく違う
従来普及していた630nm帯のLEDではヒラズハナアザミウマへの行動抑制効果がほとんどない。660nm帯を使っている虫ブロッカー赤は正しい選択をしている。
設置間隔推奨ピッチは10m間隔。ハウスの縁に沿って設置。間隔が広いと照射されないエリアが生じる。
設置方向必ず縦向きに設置する。横向きにすると照射エリアが狭くなり効果が低下する。
点灯時間帯日中のみ(日の出1時間前〜日の入り1時間後)。夜間照射は逆にアザミウマを誘引してしまうため厳禁。

✓ 虫ブロッカーが得意なこと
・外からの侵入を抑制する(ハウス縁への設置が前提)
・密度が低い状態での維持・予防
・定植初期からの侵入・活動の抑制
・薬剤抵抗性に関係なく使い続けられる
・マルハナバチ・天敵カブリダニへの影響なし

✗ 虫ブロッカーが苦手なこと・限界
すでにハウス内に入って高密度になった個体の密度低下(これが現在の最大の問題)
・花の奥・葉裏に潜んでいる個体への効果(光が届かない)
・土中にいる蛹への効果なし
・株が大きくなり葉が込み合うと照射が弱まる
・単体での使用では限界があり、農薬との組み合わせが前提

「虫ブロッカーが効かなかった」という解釈について
虫ブロッカーは外部からの侵入を抑制するツールだ。ハウスの縁に設置して「外から入れさせない」ことが主な役割であり、すでにハウス内で増殖している個体を減らす機能はほとんどない。

「虫ブロッカーを使っているのに減らない」のは虫ブロッカーが悪いのではなく、設置目的(侵入防止)と現在の問題(内部増殖)がミスマッチしている可能性が高い。内部で増え続けている状態では、入口をいくら塞いでも密度は下がらない。

来季の正しい使い方:定植初期(密度がほぼゼロの状態)から点灯を開始し、薬剤ローテーションと組み合わせることで「入れさせない+増やさない」を両立させる。

現時点の見立て(仮説)
散布記録・薬剤構成・増加パターンの3点から見ると、現在は仮説Bの内部増殖が主要因になっている可能性が高いと考えられる。ただしこれはあくまで仮説であり、確定ではない。仮説Aの外部侵入も初期の密度差を作った要因として否定できない。両方の可能性を踏まえた上で対策を設計することが重要。

モニタリングで「どちらか」を確かめられる
粘着トラップをハウス内の側窓沿い・中央に配置して週次で捕獲数を記録することで、侵入パターンが数字として見えてくる。側窓側だけ多ければ外部侵入が主因、全体に均一であれば内部増殖が主因という判断ができる。2〜3週でパターンが見えてくるため、来週から始めれば今シーズン中に答えが出る。→ 詳細は⑩モニタリングセクション参照

⑦ 現在のコンサル方針への評価
現在のコンサル方針(確認済み)
散布サイクル:10日間隔の定期散布 + 間にプレスト(葉面散布肥料)を挟む
強い薬の扱い:ディアナは温存。現状維持・抑制を優先
判断の根拠:アザミウマは確認されているが果実への食害は少ない

✓ 評価できる点
散布間隔の取り組み姿勢:10日間隔に加えてプレスト(葉面散布肥料)を間に挟んでいる。プレスト自体にアザミウマへの直接的な殺虫効果はないが、リン酸・カリ補給で株を強化する意図は理解できる。
果実被害が出ていない事実:虫ブロッカーと現状の散布が組み合わさって「崩壊を防いでいる」状態を作れている。辛うじてのバランスだが完全に手が付けられない状態ではない。

✗ 物足りない点
「現状維持」止まりで「リセット」になっていない:前週より増えているなら、維持を目指しても追いつかない可能性がある。
強い薬が温存されたまま:密度が前週より増えているということは現状の散布では増加を上回れていない状態だ。
「果実被害が少ない」だけで判断が止まっている可能性:被害が出てから対策を強化するのでは遅い。花での密度は果実被害より先行する。

コンサル方針を尊重しながらできること
コンサルの方針を否定するのではなく、「今シーズン中に一度だけ強く叩くタイミングを作れるか」という提案を加えるのが現実的だ。ディアナを使った先制散布を1回だけ実施した上で、その後は10日間隔のローテーションに戻す。この「リセット1回+維持継続」という組み合わせがシーズン終盤の果実被害を防ぐ可能性を高める。

ただし一点確認が必要:プレストは農薬登録のない葉面散布肥料(リン酸・カリ・銀イオン等)であり、アザミウマへの殺虫・忌避効果は成分的に期待できない。「間にプレストを挟む=実質5日ごとの防除になる」という解釈は成立しないため、防除の骨格はあくまで10日間隔の農薬散布になる。村井さんがプレストを挟む意図(株強化か、何か別の根拠があるのか)を一度確認しておく価値がある。

⑧ 改善提案
フェーズ1リセット(最優先)― ハウス全体の密度を一度叩く
Day 0
ディアナ
温存していた最強剤で初打ち。密度を一気に下げる
Day 3〜4
ベネビア
生き残りと次世代を叩く。世代更新を断ち切る
Day 6〜7
グレーシア または ファインセーブ(全体)
仕上げ。異なる系統で耐性リスクを分散。※プレストは農薬ではないためこの枠には入らない
ポイント:3〜4日間隔の根拠は「卵が孵化して幼虫が地上に出るまでの時間(約3〜4日)」に合わせているため。1世代完了は25℃で約10日かかるが、薬が効くのは地上にいる幼虫・成虫のみ。孵化直後のタイミングを逃さず連続で叩くことで密度を断ち切る。
※ スピノエース・ディアナは温存。密度が下がらない場合の切り札として残す。

フェーズ2維持 ― 密度を上げない予防的運用
フェーズ1で密度を下げたあと、5〜7日間隔の定期散布で維持。状況に応じて間隔・薬剤を調整しながら運用。

ローテーション候補:ベネビア → ファインセーブ(全体) → グレーシア → ベネビア…の繰り返しが系統分散としてバランスよい。モスピランは速効性があるが耐性リスクに注意。

⑨ 運用改善:スポット散布の評価と課題
現在の運用:花に息を吹きかけてアザミウマの発生を確認し、発生が多い箇所にファインセーブ・ピタイチを散布。全体散布の回数にはカウントしていない。
✓ 正しくできていること
花への息吹きかけによるモニタリング:息を吹きかけると花から出てくるため、密度の感覚をつかむ方法として正しい。
ファインセーブ・ピタイチの組み合わせ:ファインセーブは新系統(34)で効果が高い。ピタイチは気門封鎖で抵抗性に関係なく使える。
現場として真剣に向き合っている:発見→即対応の姿勢は重要。スポット散布をやっている労力は評価できる。

✗ 構造的な限界
① 卵・蛹・花の奥には届かない:見えているものを叩いても、花の組織内の卵・土中の蛹には薬液が届かず次世代が育ち続ける。
② 局所は減るが全体は減らない:アザミウマは数メートル範囲で移動する。1株だけ叩いても周辺株から再侵入する。
③ 薬剤ローテーション管理から外れている:ファインセーブの実使用回数が把握できず、耐性リスクの死角になる。

「回数に含めない」ことへの懸念
耐性リスク:ファインセーブは系統34の新規薬剤。全体+スポットを合わせた実際の使用回数が把握できないと、同じ系統への露出が増えて耐性が出始めるタイミングを見逃す可能性がある。

効果判断のズレ:「10日間隔」の方針でどれだけ効いているかを評価するとき、スポット散布の影響が混ざっていると正確な評価ができない。なおプレスト(葉面散布肥料)は農薬ではないため、防除効果の評価対象には含まれない。

記録を残す

日付・薬剤・場所・おおよその株数を簡単にメモする。月ごとに振り返れる状態を作る。

役割を「補助」に限定する

スポット散布は「全体散布で取り切れなかったエリアを補う」位置づけ。全体散布の代替にしない。

判断基準を変える

増えたのを見てから散布

トラップデータと組み合わせて密度が上がる前に全体散布を前倒し

⑩ 粘着トラップによるモニタリング
粘着トラップの目的は「駆除」ではなく「状況把握」。アザミウマがどこから入ってどこで増えているかを週単位で見える化することで、散布判断の精度が上がる。
侵入経路の判別方法(側窓 vs 内部増殖)
よく開閉する左右の側窓が主な侵入口として疑われる。トラップを左側窓沿い・中央・右側窓沿いの3列に置いて比較する。
外部飛び込みが主因の場合
側窓に近い列だけ捕獲数が多く、中央は少ない。側窓に近いほど密度が高い分布になる。
内部増殖が主因の場合
3列とも捕獲数がほぼ均一。または花の多い列・特定の株周辺だけ多いという分布になる。
ハウス1・2の向きの違いによる差を確認したい場合は、同じ配置で両ハウスに設置して側窓沿いの数を比較する。

推奨配置(ハウス1棟あたり)
← 妻側     中間     妻側 →
【右側窓沿い】 🟦  🟦  🟦
【中   央】 🟦  🟦  🟦
【左側窓沿い】 🟦  🟦  🟦
🟦 = 青色粘着トラップ(計9枚) 天窓も見たい場合は中央列の天窓真下に1枚追加

設置高さは花の高さより少し上か、側窓・天窓に近い高めの位置に。マルハナバチの飛行ルート(ベッド高さ付近)とかぶらないようにする。

マルハナバチへの影響について
✓ 問題になりにくい理由
粘着トラップは農薬ではないので化学的な影響はゼロ。引っかかるのは飛行中に偶然接触した個体のみ。モニタリング目的の少数設置(1棟9枚程度)では受粉に影響が出るほどの数は捕まらない。

⚠ 気をつける点
マルハナバチも青色に引き寄せられる性質がある。設置場所をベッド高さに合わせないこと。花粉補給用の青い容器と近い位置に置くと混乱を招くため避ける。

運用ルール
交換・記録週1回・同じ曜日に交換。交換時に各トラップの捕獲数をカウントして場所ごとに記録する。
判断のめやす先週より明らかに増えているエリアがあれば、そのエリアを重点的にスポット散布する判断の根拠にする。
2〜3週で見えること分布パターンが安定してくる。外部侵入か内部増殖かの傾向が数字として見えてくる。

⑪ 結論
現在のフェーズ
「予防」ではなく「制圧フェーズ」
まず内部密度を一度リセットすることが最優先
主因の変遷
外部侵入(初期)→ 内部増殖(現在)
外からの対策より内部を叩くことが効く
取るべき行動
ディアナで先制→ 3〜4日間隔で連続散布
卵が孵化して地上に出るタイミング(約3〜4日)に合わせて連打。薬が効かない卵・蛹の期間を挟まず叩き続ける
現場用まとめ:LEDでも侵入でもなく、
「中にいるやつを潰し切れていない」のが本質。まず内部密度をリセットする。