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一粒は、ひとりでは育たない。オアシスファーム町田の「持ち場」とチームの約束

いちごを囲む虫めがね・じょうろ・羅針盤・ノート・手袋が金色の線でつながり、チームでいちごを育てる様子を表したイラスト

いちごを愛するすべての諸君。

朝晩の空気がひんやりと澄み、ハウスの株元では、小さなつぼみが顔を出す準備を始めている。いちごの一年が、いちばん大切な季節へと向かっていく。

いちごは、腕のいい名人がひとりで育てるもの。多くの者はそう思っている。だが、それは半分しか真実を見ていない。一粒の実の裏には、株を見つめる目、虫に気づく目、ハウスの機械をいたわる手、お客様を迎える笑顔が、いくつも重なっているのだよ。

この記事では、今シーズンのオアシスファーム町田が、どんなチームで、どんな約束のもとにいちごを育てていくのかをお伝えする。読み終えたとき、ハウスで働く一人ひとりの姿が、少し違って見えるはずだ。

オアシスくん
オアシスくん

博士、今シーズンは「持ち場」を分けたって聞きました。みんなで全部やるほうが、助け合えていい気がするんですが……。

いちご博士
いちご博士

やさしい問いだね。だが、全員が全部を見ようとすると、かえって誰も最後まで見届けられないことがあるのだよ。

1.なぜ「持ち場」を分けるのか

1.1 担当とは「縄張り」ではなく「最後まで見届ける人」

持ち場を分けると聞くと、「ほかの人の担当には口を出してはいけない」と感じるかもしれない。だが、ここで言う担当は、その人しか触ってはいけない範囲のことではない。

担当とは、最後まで気にかけて、判断の軸になる人のことなのだよ。株や虫の様子はみんなで見る。気づいたことは誰が言ってもかまわない。そのうえで、「最後に見届けるのは誰か」をはっきりさせておく。それが持ち場の意味だ。

日々のルーティン作業は、現場のみんなで分担する。リーダーがすべてをひとりで作業するのではなく、みんなが手を動かし、リーダーは判断と仕上がりを見届ける。その組み合わせで、農園を回していくのだよ。

1.2 「ムラ」を消すと、一粒がそろう

たとえば薬の散布だ。同じ薬でも、撒く人によって量や葉へのかかり方が少しずつ変わる。葉の表だけでなく裏や成長点まで、狙ったとおりに届いているか。その感覚は、毎回同じ人が積み重ねるほど確かになる。だから散布は、できるだけ決まったメンバーで行う。

仕事の質の「ムラ」が消えれば、実の質もそろっていく。持ち場を分けるのは、人を分けるためではない。一粒の品質をそろえるためなのだよ。

いちご博士
いちご博士

持ち場とは、壁ではなく「責任を持って見届ける場所」のことなのだよ。

オアシスくん
オアシスくん

担当は縄張りじゃなくて、最後まで見届ける人なんですね。気づいたことは、遠慮なく言っていいんだ!

オアシスくん
オアシスくん

じゃあ、町田ではどんな持ち場があるんですか?

いちご博士
いちご博士

よかろう。今シーズンの町田を支える顔ぶれを、ひとりずつ紹介しよう。

2.オアシスファーム町田のチーム

この記事でいう「農園責任者」は鈴木大輝を指す。「各リーダー」は、栽培リーダーの北見さんと、運営・保守リーダーの髙田さんのことだ。農園責任者は農園全体の運営・人員体制・最終判断と結果に責任を持ち、各リーダーは任された持ち場の段取りと品質を担う。松浦さんは栽培の専門家パートナーとして助言する役なのだよ。

このほか、本社の社長特別補佐である國岡さんがグループLINEに入っている。國岡さんは日々の作業の相談先ではなく、緊急時や重大な問題のときの相談窓口だ(くわしくは4.6で紹介する)。

2.1 鈴木大輝|すべてをつなぐ「農園責任者」

持ち場を分ければ、今度はそれをつなぐ役が要る。農園責任者である鈴木大輝は、チーム全体のまとめ役であり、最後の判断と責任を持つ人だ。

  • 栽培のやり方と「なぜそうするのか」を言葉にして残し、来年も同じ品質で育てられるようにする
  • 灌水・肥料・ハウスの環境データ・機械の状態など、毎日の流れを把握する
  • 資材・苗・設備の業者とやり取りし、必要な手配や更新をする
  • 採用・配置転換を含む人員体制を整える
  • 各リーダーに任せる判断の範囲を明確にし、その範囲を超える変更は提案を受けて決める
  • いちご狩りの集客や販売、農園を回す仕組みづくりに責任を持つ
  • 松浦さんの助言に沿って町田のチームが動けるよう、実行体制と段取りを整え、栽培も運営も、結果の最終的な責任を持つ

鈴木大輝は農園全体の状況を把握するが、役割分担上、現場作業を直接担うのは最小限になる。日々の作業は現場のチームで分担し、全体をつなぐこと、必要な判断と手配をすることに軸足を置くのだよ。

2.2 松浦さん|遠くから進路を照らす「栽培の専門家パートナー」

いちごの環境制御栽培の専門家である松浦さんには、栽培の専門家パートナーとして伴走してもらっている。毎日ハウスにいるわけではない。それでも、ハウスの環境データや町田から届く写真を見ながら、気になるところがあれば町田のメンバーに様子を尋ね、少し先を見通して進路を示してくれる。いわば、航海の羅針盤だ。

羅針盤が示す方向に沿って、船を進めるのが町田のチームだ。町田のチームは松浦さんの助言に従って栽培を進める。そして、その実行を支え、結果の最終的な責任を負うのは、農園責任者である鈴木大輝なのだよ。

  • 灌水・肥料・防除・温度管理など、栽培の基本の型を提案する
  • この先の予定に無理や心配がありそうなとき、前もって知らせる
  • 株・虫・病気の様子を町田のメンバーと確かめながら、薬の種類・時期・量を提案する
  • 業者の紹介や、経営の判断についての助言

2.3 北見さん|株の声を聴く「栽培リーダー」

いちごは言葉を話さない。だが、葉の色、つぼみの膨らみ、葉の裏にひそむ小さな虫が、いつも何かを語っている。その声をいちばん近くで聴き取るのが、栽培リーダーの北見さんだ。

  • 株・虫・病気の様子を見立てる(みんなが見て報告したことを集めて、「今どういう状態か」を判断する)
  • 薬の散布の中心を担い、かかり具合の質をそろえる
  • 花芽やつぼみの確認
  • 受粉を手伝う虫(ハエ・マルハナバチ)のお世話
  • 葉かき・ランナー取りなど、栽培作業の仕上がりを見る

2.4 髙田さん|農園の玄関と骨組みを守る「運営・保守リーダー」

どれほど見事な実が実っても、お客様を気持ちよく迎えられなければ、その一粒は届かない。そして、水を運ぶ灌水機や、夜の冷えから株を守る暖房が止まれば、株はたちまち弱ってしまう。農園の「玄関」と「骨組み」を守るのが、運営・保守リーダーの髙田さんだ。

  • いちご狩りの運営(受付・ご案内・園内のルール・お客様の安全)
  • ハウスまわり・園内・備品の日常点検と整備
  • 灌水機・暖房・散布機など、栽培に使う機械の日常点検(不具合にいちばん先に気づく役)
  • マルチ張りの段取りと実施、仕上がりの確認
  • いちご狩りの日の、人の配置と段取り

2.5 塩野さんとパートの皆さん|日々の作業を支える「たくさんの手と目」

そして忘れてはならないのが、パートメンバーの塩野さんをはじめ、毎日ハウスで手を動かす皆さんだ。日々のルーティンは、リーダーもパートメンバーも、現場のみんなで分担して行う。農園の毎日は、こうした手仕事の積み重ねで支えられている。

  • 定点観測(同じ場所の株やハウスの様子を継続して見ること)と記録
  • pH(水の酸性・アルカリ性の度合い)やEC(肥料濃度の目安)の確認・調整
  • その日の天気に合わせた、ハウス側面のサイド・天窓・カーテンの調整
  • ランナー取り、泥芽・脇芽取り、葉かきなどの株の手入れ
  • 草取り・草刈りなど、ハウスまわりや園内の手入れ

作業のやり方や調整の基準をチームでそろえ、その日の分担を決めて動く。その手の先に、いちばん多くの「気づき」が落ちている。「つぼみが出てきた」「葉の裏に虫がいた」。その一言が、チーム全体の次の一手を決めるのだよ。

いちご博士
いちご博士

判断の軸はひとりでも、株を見る目はチーム全員の数だけあるのだよ。

オアシスくん
オアシスくん

農園責任者の鈴木大輝が全体の判断と責任、松浦さんが羅針盤、栽培リーダーの北見さんが株、運営・保守リーダーの髙田さんが農園の玄関と機械。それぞれに見届ける場所があるんですね!

オアシスくん
オアシスくん

でも、持ち場がバラバラだと、話がかみ合わなくなりませんか?

いちご博士
いちご博士

鋭いな。だからこそ、週に一度、全員の向きをそろえる時間をつくっているのだよ。

3.週に一度の「作戦会議」

3.1 毎週月曜の朝、向きをそろえる

毎週月曜の朝10時から、松浦さん・北見さん・鈴木大輝の3人でオンラインの栽培会議を開いている。先週の株の様子を振り返り、松浦さんの助言をもとに今週の作業と防除を決め、この先の心配ごとを話し合う。

決まったことは、その日のうちに髙田さんにも伝わる。そして基本は、この会議で決めたことを、1週間かけてそれぞれの持ち場で実行していく。地図を一枚にそろえてから、それぞれが自分の道を進むわけだ。

3.2 週の途中の相談は「みんなに見える場所」で

とはいえ、株は月曜を待ってはくれない。週の途中で気になる変化があれば、北見さんと松浦さんが直接やり取りしてかまわない。ただし、その中身はチーム全員に共有する。誰かだけが知っている情報をつくらないためだ。助言を聞くことと、決まっている方針を変えることは分けて考える。任された判断の範囲での栽培の調整は、栽培リーダーの北見さんが決め、範囲を超える方針変更は、助言の内容と変更案を鈴木大輝に相談して決める。変更内容と実施の判断は、作業に入る前にチームへ共有するのだよ。

3.3 「日付」ではなく「株の様子」を合図に動く

この秋冬、町田は「カレンダーで動く」栽培から、「株を見て動く」栽培へと切り替えた。つぼみが見えたか、二番目の花芽が育っているか、虫がいるか。その合図を見逃さないために、作業中は全員が花芽・つぼみ・虫を意識して見る。会議で話し合う材料は、みんなの目が集めてくるのだよ。

いちご博士
いちご博士

会議で地図をそろえ、合図は株からもらう。それが町田の進み方なのだよ。

オアシスくん
オアシスくん

月曜にそろえて、週の途中の相談はみんなに見えるように。それなら安心して動けます!

オアシスくん
オアシスくん

最後に、チームで大事にしていることってありますか?

いちご博士
いちご博士

ある。これが、このチームのいちばんの土台かもしれない。

4.チームの約束

4.1 それぞれのリーダーに期待していること

  • 自分の持ち場での、積極的な提案や気づき:「こうしたらもっと良くなる」「これが気になる」を、どんどん出してほしい
  • 限られた中での最善手を探すこと:予算にも設備にも限りがある。その中で、今できるいちばん良いやり方を一緒に考えてほしい

4.2 任された範囲は自分で決め、範囲を超えるときは提案する

持ち場のリーダーは、あらかじめ任された範囲では、自分で判断して進め、結果を報告する。たとえば、北見さんは日々の栽培作業の段取り、髙田さんは当日の運営の段取りや日常点検の進め方を決める。判断の範囲が曖昧なときは、鈴木大輝に確認してから進めるのだよ。

追加の購入や営業日・予約枠の変更など、任された範囲を超えることは、「こうしようと思います。理由はこうです」という提案の形で鈴木大輝に相談する。現場をいちばん近くで見ているリーダーの考えを受けて、農園責任者の鈴木大輝が決めるのだよ。

ただし、異常や危険は、答えがなくてもすぐに知らせてほしい。改善の相談では、可能な範囲で自分の案も添える。早い報告と、よく考えた提案。その両方がチームを支えるのだよ。

4.3 ほかの持ち場への「お願い」は、リーダーを通して

ほかの持ち場で気づいたことは、遠慮なく伝えてほしい。ただし、ほかの持ち場の「答え合わせ」や「責任の追及」はしない。

そして、ほかの持ち場の人に「こうしてほしい」とお願いしたくなったときは、直接頼むのではなく、その持ち場のリーダーを通して伝える。伝えるのは見えた事実、どう動くかを決めるのはその持ち場のリーダーだ。頼みごとがあちこちから飛び交うと、現場の人は「誰の言うことを聞けばいいのか」で迷ってしまう。それぞれが自分の持ち場に集中できることが、チーム全体の力になるのだよ。

同じスタッフに栽培と運営・保守の依頼が重なるときは、農園責任者の鈴木大輝が、作業の優先順位と人の配置を調整する。北見さんと髙田さんは、それぞれ必要な作業・人数・期限を鈴木大輝に伝える。予定の重なりが分かっている場合は、早めに相談してほしい。スタッフ本人がどちらの依頼を優先するか迷わないようにするための約束なのだよ。

4.4 大事にしたいこと

  • 人ではなく、起きている事実を見る。気になることがあれば、「こう見えたよ」と事実を伝える。誰かを問い詰めることはしない
  • 報告したことで責められることはない。ミスや失敗も、早く分かればみんなで手が打てる
  • 意見が分かれたときは農園責任者の鈴木大輝が決める。決めたあとは、全員がそのやり方でそろえる
  • 責任を持って取り組む人が損をしない農園にする

見間違いかもしれない小さな気づきでも、早く上がった報告ほど助かる。報告とは、誰かを責める材料ではない。株を守るための、いちばん早い手段なのだよ。

4.5 日々の相談先

栽培の相談は栽培リーダーの北見さんへ、運営・保守の相談は運営・保守リーダーの髙田さんへ。それぞれの出勤予定を確認し、前もって分かる作業や判断が必要なことは、できるだけ出勤中に早めに相談してほしい。休みの日に、その場ですぐ返答してもらうことを前提にはしない。

各リーダーが不在のときや、判断に迷うときは、農園責任者の鈴木大輝へ相談してかまわない。鈴木大輝には、勤務日にかかわらず、基本的にいつでも連絡してよい。ただし、すぐに返答できない場合もあるので、予定が分かっていることは余裕をもって相談してほしい。

急な異常や危険は、事前に相談できていなくても、ためらわずすぐに知らせてほしい。

4.6 緊急時・重大な問題の相談先(國岡さん)

町田の現場とは別に、会社側の相談窓口として、本社の社長特別補佐である國岡さんがグループLINEに入っている。國岡さんは、ふだんの作業の相談先ではなく、次の2つのときに直接相談できる人だ。

  • 鈴木大輝と連絡が取れず、急いで判断が必要なとき:安全を守るためや、大きな損害を防ぐために、すぐ判断しなければならないとき
  • 重大な問題やその疑いがあるとき:ハラスメント、不正、重大なルール違反など、農園の安全や公正な運営に関わること。鈴木大輝本人に関わる問題も含む。鈴木大輝へ先に相談したり、許可を取ったりする必要はない。問題かどうか迷う場合も、分かっている事実を伝えてほしい

相談するときは、「いつ、何が起きたか」「これまでどう伝えたか」「今、何に困っているか」を、分かる範囲で伝えてほしい。

一方で、各リーダーが不在というだけの理由や、ふだんの作業の相談、判断への意見の違いは、國岡さんではなく4.5の相談先で話し合う。國岡さんへの直接の相談は、緊急時や重大な問題を一人で抱え込まないための経路なのだよ。

いちご博士
いちご博士

一粒の甘さは、ひとりの名人の腕ではなく、互いを信じて見届け合うチームの総和から生まれるのだよ。

オアシスくん
オアシスくん

自分の持ち場をしっかり見届けて、気づいたことはどんどん伝えます。異常はすぐに報告し、任された範囲を超えるときは「こうしようと思います」で相談します。今シーズンの一粒、チームみんなで最高のものにします!

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