いちごを愛するすべての諸君。
いちごを甘くするために、農家がしていること——それは水やりでも肥料でもなく、「葉っぱをちぎること」だと聞いたら、驚くだろうか。
葉かきとは、いちごの葉を意図的に取り除く作業のことじゃ。一見すると「植物を傷めているのでは?」と思うかもしれない。しかし実際は、この作業こそが甘くて大粒のいちごを生み出す、重要な管理技術に他ならない。本記事では、農場のプロが毎日向き合う「葉かき」の科学を、いちご博士とオアシスくんがわかりやすく解説していく。いちご狩りで赤いいちごを手にするとき、きっとその1粒が違って見えるはずじゃ。
そもそも「葉かき」って何?——植物をあえて傷める、逆転の発想


いちごの株は、葉・ランナー(脇から伸びるつる)・花・果実のすべてに向けて、光合成で作った栄養を分配しておる。葉が多すぎると、栄養の多くが「葉を維持すること」に使われてしまい、肝心の果実に届く栄養が減ってしまうのじゃ。
葉かきとは、古くなった葉や多すぎる葉を取り除くことで、栄養の流れを果実に集中させる技術じゃ。葉を減らすことで実が育つ——これが葉かきの逆転の発想じゃよ。


葉かきには3つの目的がある——甘さ・病気・光、すべてがつながっている


① 栄養を果実に集中させる
前章で触れた通り、古い葉や過剰な葉を取り除くことで、株の栄養が果実に優先的に流れるようになる。これがいちごの糖度と果実サイズに直結する、葉かき最大の目的じゃ。
② 光を株全体に届ける
葉が茂りすぎると、下の方の果実や花に太陽の光が届かなくなる。光が当たらない果実は色づきが悪く、甘さも乗りにくい。葉かきで株の内部まで光を通すことで、いちご全体が均一に、美しく色づくのじゃ。
③ 病気・害虫の発生を抑える
葉が密集した環境は、湿気がこもりやすく、カビや病原菌にとって格好の住処となる。古い葉や傷んだ葉を取り除くことで風通しを良くし、病気の温床を根本から断つのじゃ。


ここで整理しておきたい重要な点がある。葉かきの目的は「光合成を増やすこと」ではなく「古い葉・弱った葉を取り除き、株の負担を減らすこと」じゃ。光合成の主役はあくまで若い健康な葉——その葉を守りながら、働きを失った葉だけを取り除くのが葉かきの本質なのじゃ。
「光が果実に届くようにする」という採光改善の効果はあるが、これは「光合成量を増やす」こととは別の話じゃ。目的を正しく理解することが、正しい作業につながるのじゃよ。


「いつ」葉をかくか——タイミングを間違えると逆効果になる


葉かきの主なタイミングは、いちごの生育ステージに合わせて行うのが基本じゃ。
- 定植後・生育初期:株が根付いて新しい葉が展開し始めたころ、古い葉や傷んだ葉を整理する。株のエネルギーを根の定着と新葉の展開に集中させるためじゃ
- 花芽が出始めるころ:花や果実に栄養を届けるため、株元の古い葉を中心に取り除く。この時期の葉かきが、第一果房の品質に直結するのじゃ
- 収穫期を通じて継続的に:古くなった葉・黄色くなった葉・病気の兆候がある葉を見つけ次第こまめに取り除く。葉かきは「一度やれば終わり」ではなく、シーズンを通じた継続作業じゃ


「どう」かくか——取るべき葉と残すべき葉の見分け方


✅ 取るべき葉
- 黄色くなった葉・枯れかけた葉:光合成の能力が著しく低下しており、栄養を消費するだけの「お荷物」になっておる
- 地面に触れている葉:土や培地に触れた葉は病気や害虫の侵入口になりやすい。株元の衛生を保つために取り除くのじゃ
- 重なって光を遮っている葉:下の果実や花への光を塞いでいる葉は、全体のバランスを考えて整理するのじゃ
- 病気の兆候がある葉:斑点・カビ・変色が見られる葉は、早急に取り除かないとハウス全体に広がるリスクがある
❌ 残すべき葉
- 緑色が濃く、張りのある若い葉:光合成の主役じゃ。これを取ると株全体が弱る
- 花や果実の近くにある健康な葉:果実の育成を直接支えている葉じゃ。不用意に取ると果実が小さくなる原因になる


やりすぎたらどうなる?——葉かきの「失敗」が生む悲劇


葉かきをやりすぎると、以下のような問題が連鎖的に起こるのじゃ。
- 光合成不足で株が弱る:葉が少なくなりすぎると、株が必要なエネルギーを作れなくなる。結果として株全体が衰弱し、果実の育ちが止まることがある
- 果実が日焼けする:葉が果実を守る「日傘」の役割も担っておる。葉を取りすぎると直射日光が果実に当たりすぎ、変色・品質低下につながるのじゃ
- 収量が激減する:株が弱れば花の数も減り、収穫できる果実の数も減っていく。一度弱った株を回復させるのには時間がかかるのじゃ


まとめ——1粒のいちごに込められた、毎日の判断







