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いちごが甘くなる理由は”葉っぱを取ること”にあった——葉かきの科学をいちご博士が解説

いちごを愛するすべての諸君。

いちごを甘くするために、農家がしていること——それは水やりでも肥料でもなく、「葉っぱをちぎること」だと聞いたら、驚くだろうか。

葉かきとは、いちごの葉を意図的に取り除く作業のことじゃ。一見すると「植物を傷めているのでは?」と思うかもしれない。しかし実際は、この作業こそが甘くて大粒のいちごを生み出す、重要な管理技術に他ならない。本記事では、農場のプロが毎日向き合う「葉かき」の科学を、いちご博士とオアシスくんがわかりやすく解説していく。いちご狩りで赤いいちごを手にするとき、きっとその1粒が違って見えるはずじゃ。


そもそも「葉かき」って何?——植物をあえて傷める、逆転の発想

オアシスくん
オアシスくん
博士、葉かきって葉っぱをむしり取るんですよね?なんか植物がかわいそうな気がするんですが…。
いちご博士
いちご博士
その「かわいそう」という感覚こそが、葉かきの本質を理解する入口じゃ。植物に限りある栄養を「どこに使うか」を、農家が意図的にコントロールする——それが葉かきの目的なのじゃよ。

いちごの株は、葉・ランナー(脇から伸びるつる)・花・果実のすべてに向けて、光合成で作った栄養を分配しておる。葉が多すぎると、栄養の多くが「葉を維持すること」に使われてしまい、肝心の果実に届く栄養が減ってしまうのじゃ。

葉かきとは、古くなった葉や多すぎる葉を取り除くことで、栄養の流れを果実に集中させる技術じゃ。葉を減らすことで実が育つ——これが葉かきの逆転の発想じゃよ。

オアシスくん
オアシスくん
葉を取ることで、実に栄養が集まるんですね!でも葉が減ったら光合成できなくなりませんか?
いちご博士
いちご博士
鋭い。だからこそ「取りすぎてはいけない」のじゃ。光合成に必要な若い葉は残しつつ、老化して働きの落ちた葉だけを取る——この見極めが、葉かきの腕の見せどころなのじゃよ。

葉かきには3つの目的がある——甘さ・病気・光、すべてがつながっている

オアシスくん
オアシスくん
葉かきって、栄養を集めるためだけじゃないんですか?
いちご博士
いちご博士
葉かきには3つの大きな目的がある。栄養・光・病気——この3つはすべて連動しておるのじゃ。

① 栄養を果実に集中させる

前章で触れた通り、古い葉や過剰な葉を取り除くことで、株の栄養が果実に優先的に流れるようになる。これがいちごの糖度と果実サイズに直結する、葉かき最大の目的じゃ。

② 光を株全体に届ける

葉が茂りすぎると、下の方の果実や花に太陽の光が届かなくなる。光が当たらない果実は色づきが悪く、甘さも乗りにくい。葉かきで株の内部まで光を通すことで、いちご全体が均一に、美しく色づくのじゃ。

③ 病気・害虫の発生を抑える

葉が密集した環境は、湿気がこもりやすく、カビや病原菌にとって格好の住処となる。古い葉や傷んだ葉を取り除くことで風通しを良くし、病気の温床を根本から断つのじゃ。

オアシスくん
オアシスくん
葉を取るだけで、甘さも病気予防も光の問題も全部解決するなんてすごいですね!でも「葉かきは光合成のためにしない」って言っている人もいるみたいで…。
いちご博士
いちご博士
その意見、半分は正しいのじゃ。葉を取れば光合成の総量は確かに下がる。だから「光合成を増やすために葉かきをする」という説明は正確ではない。しかし——「だから葉かきは不要」とはならんのじゃよ。

ここで整理しておきたい重要な点がある。葉かきの目的は「光合成を増やすこと」ではなく「古い葉・弱った葉を取り除き、株の負担を減らすこと」じゃ。光合成の主役はあくまで若い健康な葉——その葉を守りながら、働きを失った葉だけを取り除くのが葉かきの本質なのじゃ。

「光が果実に届くようにする」という採光改善の効果はあるが、これは「光合成量を増やす」こととは別の話じゃ。目的を正しく理解することが、正しい作業につながるのじゃよ。

オアシスくん
オアシスくん
「光合成のためではない」は正しいけど、「だから葉かきしない」は間違い——ということですね。
いちご博士
いちご博士
その通りじゃ。目的が違うだけで、葉かきの必要性は別の理由でしっかり成立しておる。「なぜするのか」を正しく理解している農家と、そうでない農家——その差が、品質の差となって現れるのじゃよ。

「いつ」葉をかくか——タイミングを間違えると逆効果になる

オアシスくん
オアシスくん
葉かきって、気づいたときにやればいいんじゃないですか?
いちご博士
いちご博士
そのやり方では、成果は出ない。葉かきにはいちごの生育ステージに合わせた「適切なタイミング」がある。思いつきではなく、論理に基づいて行うものじゃ。

葉かきの主なタイミングは、いちごの生育ステージに合わせて行うのが基本じゃ。

  • 定植後・生育初期:株が根付いて新しい葉が展開し始めたころ、古い葉や傷んだ葉を整理する。株のエネルギーを根の定着と新葉の展開に集中させるためじゃ
  • 花芽が出始めるころ:花や果実に栄養を届けるため、株元の古い葉を中心に取り除く。この時期の葉かきが、第一果房の品質に直結するのじゃ
  • 収穫期を通じて継続的に:古くなった葉・黄色くなった葉・病気の兆候がある葉を見つけ次第こまめに取り除く。葉かきは「一度やれば終わり」ではなく、シーズンを通じた継続作業じゃ
オアシスくん
オアシスくん
シーズンずっと続けるんですね。毎日いちごの葉の状態を見ているんですか?
いちご博士
いちご博士
毎日じゃ。いちごは生き物じゃから、日々状態が変わる。黄色くなった葉・傷んだ葉・密集してきた葉——これらを見逃さず、その都度対応することが、品質の再現性につながるのじゃよ。

「どう」かくか——取るべき葉と残すべき葉の見分け方

オアシスくん
オアシスくん
どの葉を取ればいいんですか?全部取れば果実に栄養が行くんじゃ…?
いちご博士
いちご博士
全部取ることは絶対にいかん。光合成は若い葉が担っておる。取るべき葉と残すべき葉を見極めることが、葉かきの技術の核心じゃ。

✅ 取るべき葉

  • 黄色くなった葉・枯れかけた葉:光合成の能力が著しく低下しており、栄養を消費するだけの「お荷物」になっておる
  • 地面に触れている葉:土や培地に触れた葉は病気や害虫の侵入口になりやすい。株元の衛生を保つために取り除くのじゃ
  • 重なって光を遮っている葉:下の果実や花への光を塞いでいる葉は、全体のバランスを考えて整理するのじゃ
  • 病気の兆候がある葉:斑点・カビ・変色が見られる葉は、早急に取り除かないとハウス全体に広がるリスクがある

❌ 残すべき葉

  • 緑色が濃く、張りのある若い葉:光合成の主役じゃ。これを取ると株全体が弱る
  • 花や果実の近くにある健康な葉:果実の育成を直接支えている葉じゃ。不用意に取ると果実が小さくなる原因になる
オアシスくん
オアシスくん
葉の色や状態を見て、一枚一枚判断するんですね。これって慣れるまで難しそう…。
いちご博士
いちご博士
だからこそ農家の仕事は奥が深い。毎日株を見続けることで「今日のいちごの状態」が読めるようになる。知識と経験の両方が必要な、れっきとした技術なのじゃよ。

やりすぎたらどうなる?——葉かきの「失敗」が生む悲劇

オアシスくん
オアシスくん
良かれと思って葉を取りすぎたら、どうなるんですか?
いちご博士
いちご博士
「良かれと思って」——その言葉が最も危険じゃ。葉かきは「多ければ多いほど良い」わけではない。過剰な葉かきは、いちごに深刻なダメージを与えるのじゃ。

葉かきをやりすぎると、以下のような問題が連鎖的に起こるのじゃ。

  • 光合成不足で株が弱る:葉が少なくなりすぎると、株が必要なエネルギーを作れなくなる。結果として株全体が衰弱し、果実の育ちが止まることがある
  • 果実が日焼けする:葉が果実を守る「日傘」の役割も担っておる。葉を取りすぎると直射日光が果実に当たりすぎ、変色・品質低下につながるのじゃ
  • 収量が激減する:株が弱れば花の数も減り、収穫できる果実の数も減っていく。一度弱った株を回復させるのには時間がかかるのじゃ
オアシスくん
オアシスくん
少なすぎても多すぎてもダメ……。葉かきって「引き算の美学」みたいな作業ですね。
いちご博士
いちご博士
うまい表現じゃ。不要なものを取り除き、必要なものは守る——それがいちご農家の技術の真髄じゃよ。いちご1粒の甘さの裏には、こうした毎日の判断と作業が詰まっておるのじゃ。

まとめ——1粒のいちごに込められた、毎日の判断

いちご博士
いちご博士
整理しよう。葉かきとは「葉を取る作業」ではなく、「栄養・光・病気の3つを同時にコントロールする技術」じゃ。取る葉・残す葉・タイミング——すべてに理由がある。甘いいちごは偶然ではなく、毎日の論理的な判断の積み重ねから生まれるのじゃよ。
オアシスくん
オアシスくん
いちご狩りでいちごを食べるとき、この葉かきのことを思い出しながら食べてもらえたら嬉しいです。1粒の甘さに、農家の毎日が込められているんですよ!