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いちごハウスの換気・飽差管理完全ガイド|飽差スパイクを防ぐ換気設定・夜間の飽和状態の原因と対策をいちご博士が解説【環境制御シリーズ第2回】

「換気をしたら急に果実の甘さが落ちた」「朝イチにハウスに入ると葉先が茶色くなっている」——こうした現象の原因として、真っ先に疑うべきが飽差管理のズレじゃ。換気のタイミングと開け方を少し変えるだけで、いちごの光合成量と病害リスクは大きく変わる。

本記事は環境制御シリーズ第2回として、飽差とは何か・なぜ重要か・昼夜それぞれの適正範囲・飽差スパイクを防ぐ換気の設定方法・夜間の飽和状態の原因と対策・灌水タイミングとの関係を現場レベルで解説する。第1回の温度管理と合わせて読むと、ハウス環境制御の全体像がより明確に見えてくるはずじゃ。


飽差とは何か——「空気の乾き具合」がいちごを支配する

オアシスくん
オアシスくん
飽差ってよく聞くんですけど、温度や湿度と何が違うんですか?
いちご博士
いちご博士
飽差(g/m³)とは「空気があとどれだけ水蒸気を吸収できるか」を示す値じゃ。温度と相対湿度の両方から算出される。湿度だけを見ていてもいちごの状態は読めない——飽差を見て初めて、いちごが「快適か・苦しいか」がわかるのじゃ。

飽差がなぜ重要かというと、いちごの気孔の開閉・蒸散・養分吸収に直接影響するからじゃ。気孔は葉の裏にある小さな穴で、CO2を取り込んで光合成をする「入口」でもあり、水分を蒸散させて根から養分を吸い上げる「ポンプ」でもある。飽差がこの気孔の開き具合を決めておるのじゃ。

オアシスくん
オアシスくん
飽差が高い・低いでいちごにはどんな違いが出るんですか?
いちご博士
いちご博士
高すぎると気孔が閉じてCO2が取り込めなくなり、光合成が止まる。低すぎると蒸散が止まり、根からの養分吸収が止まってチップバーン(葉先枯れ)や病害の温床になる。不足も過剰も、どちらも致命的なのじゃよ。

飽差の適正範囲——昼と夜でまったく異なる目標値

オアシスくん
オアシスくん
飽差の適正値って、昼も夜も同じですか?
いちご博士
いちご博士
まったく異なる。昼間は光合成のために気孔を開けておく必要があるため、適正範囲が広い。夜間は蒸散と養分吸収のバランスを保つことが目的で、より厳密な管理が求められるのじゃ。
時間帯 低すぎ(過湿) ✅ 適正範囲 高すぎ(過乾燥)
昼間 2g/m³未満
過湿・病害リスク
2〜6g/m³
気孔開放・光合成活発
6g/m³超
気孔閉鎖→光合成停止
夜間 0.5g/m³未満
蒸散停止・チップバーン・かび病
0.5〜3g/m³
蒸散・吸収が正常
5g/m³超
灰色かび病リスク上昇

昼間:飽差6g/m³を超えると光合成が止まる理由

空気が乾燥している(飽差が高い)状態では、葉からの蒸散で失われる水分量が増大する。いちごはこれを察知して気孔を閉じることで水分損失を防ごうとする。しかし気孔が閉じると外気からのCO2取り込みも止まり、光合成が停止してしまうのじゃ。

換気を一気に開けたときに「飽差スパイク」が起きやすい。ハウス内の湿った空気が一瞬で乾燥した外気に入れ替わり、飽差が急上昇して気孔が閉じる——これがスパイクじゃ。バズポリネーションと同様、タイミングと速度の管理が品質を左右するのじゃよ。

夜間:飽差0.5g/m³未満でチップバーンが起きる理由

オアシスくん
オアシスくん
夜間に湿度が高いと何が悪いんですか?蒸れるのはわかるんですが、葉が枯れるまでになるんですか?
いちご博士
いちご博士
蒸散とは単なる「水の蒸発」ではない。根から養分を吸い上げるポンプの役割を担っておる。空気が飽和状態になると蒸散が止まり、カルシウムなどの養分が葉先まで届かなくなる。これがチップバーン(葉先枯れ)の正体じゃ。さらに水滴が葉に付いた状態は灰色かび病の感染に最適な環境を与えてしまうのじゃよ。

飽差スパイクを防ぐ——換気は「いつ・どのくらいの速さで」開けるかが全て

オアシスくん
オアシスくん
換気って、暑くなったら開ければいいだけじゃないんですか?
いちご博士
いちご博士
「暑くなったら開ける」——それだけでは飽差スパイクを防げない。重要なのは「何℃で開け始めるか」と「どのくらいの速さで開けるか」の2点じゃ。この2つは別々に設定する必要があるのじゃよ。

換気の段階設定は以下を基本とするのじゃ。「一定温度に達したら全開」ではなく、温度に応じて開度を段階的に上げることで外気の急激な流入を防ぎ、飽差スパイクを抑制できる。

ハウス内温度 換気開度の目安 目的
〜25℃ 0%(全閉) CO2施用が有効な時間帯。密閉を維持して濃度を確保
25〜28℃ 20%(微開) 外気流入を最小にしながら温度上昇を抑え始める
28〜30℃ 50%(半開) カーテン遮光と組み合わせて温度を制御
30℃超 100%(全開) 生育抑制域のため最優先で冷却。飽差急上昇に注意

「すでに高温だった場合」への対応——温度設定だけでは解決しない

オアシスくん
オアシスくん
環境制御装置に「25℃で20%、30℃で全開」って設定してあれば大丈夫ですよね?
いちご博士
いちご博士
それだけでは不十分じゃ。「CO2施用しながら密閉していたら、10時時点ですでに30℃に達していた」という状況を想像してみなさい。装置は「現在の温度=30℃=開度100%」と判断して一気に全開にしてしまう。段階設定が意味をなさないのじゃ。

段階換気を正しく機能させるには、2種類の設定をセットで行う必要があるのじゃ。

設定の種類 何を制御するか 具体例
温度段階設定 何℃になったら何%開けるかという目標開度 25℃→20%、28℃→50%、30℃→100%
開度上昇スピード設定
(スロー開放)
1回あたりどのくらいの速さで開度を変化させるか 「5分ごとに最大10%ずつ上昇させる」のように変化速度を制限する

「換気開始温度を変える」だけでなく「開度の上昇スピードを緩やかにする設定(スロー開放)」と両方セットで設定することが重要じゃ。


夜間の飽和状態を防ぐ——循環扇と灌水タイミングの関係

オアシスくん
オアシスくん
夜間に飽差が低くなりすぎるのって、どうやって防げばいいんですか?
いちご博士
いちご博士
2つのアプローチがある。ひとつは循環扇で空気を動かして水蒸気を拡散させること、もうひとつは灌水のタイミングを早めて夜間の水蒸気発生量を減らすことじゃ。

循環扇の役割——結露を促進して水蒸気を排出する

夜間にハウスを密閉した状態では、空気中の水蒸気は温度が低い部分(天井・壁面・被覆資材の内側)に向かって移動し、そこで結露として排出される。この結露が起きると空気中の水蒸気量が減り、飽差が適正方向に動くのじゃ。

循環扇はこの結露を促進させる役割を担っておる。空気が止まったままでは水蒸気が中心部に滞留して飽和状態が続くが、循環扇で空気を動かすと被覆資材の内面に接触する機会が増えて「結露→排出」のサイクルが促進される。深夜〜明け方(外気温が最も低くなる時間帯)の循環扇強化が最も効果的じゃ。

灌水タイミング——夕方以降の灌水が夜間飽差を破壊する

オアシスくん
オアシスくん
夕方に灌水すると夜間の飽差に影響するんですか?
いちご博士
いちご博士
直結しておる。灌水した水は時間をかけて蒸発し、ハウス内の湿度を上げ続ける。換気が閉まった後に灌水すると、蒸発した水蒸気の逃げ場がなくなり、夜間に飽和状態を引き起こすのじゃ。
灌水時間帯 夜間飽差への影響 推奨度
午前中(〜12時) 影響小(日中に乾燥する時間が十分ある) ✅ 推奨
昼間(12〜15時) やや影響あり △ 可能だが早めに
夕方(15〜17時) 影響あり・夜間湿度上昇の原因になりうる △ 上限として17時まで
夕方以降(17時〜) 夜間飽和の直接原因になりうる ❌ 避ける

また、防草シートや通路への散水も同様じゃ。午後の通路散水は昼間の灌水以上に夜間飽差に影響する可能性がある。これらへの水かけも午前中に完了させることが望ましい。

オアシスくん
オアシスくん
朝に葉先が茶色くなっていたのは、夕方の灌水が原因だったかもしれないんですね…。
いちご博士
いちご博士
その可能性は十分ある。チップバーンが出たとき「カルシウム不足だから肥料を足す」という対応をしてしまう農家は多いが、本当の原因が夜間飽差の飽和状態である場合、肥料を変えても何も解決しないのじゃよ。原因を正しく特定することが、すべての出発点なのじゃ。

飽差は「結果指標」——原因はどこにあるかを読む

オアシスくん
オアシスくん
飽差が適正範囲から外れていたら、飽差を直接操作すればいいですか?
いちご博士
いちご博士
飽差は「結果指標」じゃ。直接操作できるものではない。飽差が乱れているとき、それは温度・換気・灌水のどれか(または複数)に原因がある。飽差計を見て「高い・低い」を確認したら、次は「何が原因か」を探る——それが正しい順序なのじゃよ。

飽差が適正から外れたときの原因特定の考え方を整理するとこうなるのじゃ。

  • 昼間の飽差が高すぎる(6g/m³超):換気を一気に開けすぎている(スロー開放の設定が不足)・外気が極端に乾燥している・ハウス内の温度が高すぎる
  • 昼間の飽差が低すぎる(2g/m³未満):換気不足・午前中の灌水過多・気温が低すぎる
  • 夜間の飽差が低すぎる(0.5g/m³未満):夕方以降の灌水・循環扇の稼働不足・暖房による加温が不十分で夜間に急激に冷えている
  • 夜間の飽差が高すぎる(5g/m³超):暖房が強すぎる・保温カーテンが不十分で乾燥した外気が侵入している

まとめ——換気と飽差管理は「いつ・どのくらいの速さで」が全て

いちご博士
いちご博士
整理しよう、諸君。飽差は温度・換気・灌水の「結果」として現れる指標じゃ。昼間は6g/m³を超えると気孔が閉じて光合成が止まり、夜間は0.5g/m³を下回ると蒸散が止まってチップバーンと病害の温床になる。換気は段階的にゆっくり開けること、灌水は午前中に終わらせること——この2点を徹底するだけで、飽差管理の精度は大きく上がるのじゃよ。
オアシスくん
オアシスくん
チップバーンが出たとき肥料を疑っていましたが、まず夜間飽差を確認するべきだったんですね。明日から灌水は午前中に完了させて、深夜〜明け方の循環扇の設定も見直します!

次回は「CO2施用編」——CO2施用の効果・施用タイミングの設定方法・過繁茂との関係・樹勢コントロールの具体的な介入レベルを解説します。

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